★『ミッドサマー』感想メモ

・あらすじ
あらすじ自体は予想しやすいもので、それほど真新しいものではないと感じた。僕は「ひぐらし」じゃんとか思っていたけど(要検証)、まあ各々思い付く作品はあるのではなかろうか。無かった人はラッキー。十全に楽しめた人たち。
スウェーデンに渡る前までは、一体何が起こるんだ?といった感じがあったが、実際に現地に着き、団体の敷地に足を踏み入れたシーンで誰かがこぼした「カルト」の言葉を聞いたならば、まあ大体起こることは予想がつくかもしれん。
だから私にとってはミステリアスというよりもずっと明け透けな映画で(大勢にとってはミステリアスかもしれないが)、メタ的な表現やディティール、テーマ性を追求した映画だった。つまりあらすじ自体はあんまり力が入っていない映画、だと思う。

 

・テーマが強めで華々しいB級映画
そもそもこの映画は、色々文脈を知っていれば面白いシーンが多そう、という意味でB級映画っぽい。つまり文脈を知らなければ、明瞭でなくわかりにくい点が多い。
いきなり主人公以外の家族全員が死ぬのも、表現自体は迫真のものでカッコ良く、良いものだと思うが(死に方のリアリズムは置いておく。まあたぶん映画とかの見すぎでどうしてもああいう死に方をしたかったのだろう)、理由が特になく死ぬ感じはとってもB級映画っぽいご都合主義だな~、と思う。双極性障害へのリスペクトが感じられない(?)。(いや、もしかしたら今回の事件自体が双極性障害界隈では有名な事件のオマージュです、とかになったら話は別だ。調べてみる必要はあるだろう。ほら、これもかなりマニアックな文脈が必要。)
登場人物が「あ~こいつら確実に死ぬな……」とわかる展開も、すごいB級感があった。主人公の恋人をどうするんだろう、というのは最後まで気になったが、その他はありがちな理由で殺されていく。

 

むしろいくつかのテーマ性のほうが、この映画を見るうえで重要だろう。まずは「浮気(セックス)」。物語の冒頭付近からやたらセックスがしたい若者という描写が出てきて、露骨だな~と思ったが、まあ大事なテーマだからなのだろう。ある未開の地・ミステリアスな人々に対して性的なイメージを抱いたり、実際に支配して屈服させ性行為に及ぶという欲望。イギリスのカップルは、普通に脱走に失敗したという割りとダサ目の死に方をしたので除外すると、セックス男はオシッコを怒られ女に誘われ死に、黒人は単純に「見てはいけないものを見てしまい」死に、主人公の恋人は「セックスしないと出られない部屋に閉じ込められ、セックスをして部屋から出たけど恋人に裏切られ」死んだ。支配という欲望に対して否定的な目線を感じる。
けっこう面白かったのは、主人公の恋人が多様性を重んじる発言をし性行為に及んだために死ぬ、ということ。結局、多様性を重んじる言動も、未開の女とセックスをするための言い訳に過ぎないんだろ?というようなメッセージを感じる。実際、彼は同調圧力と性欲に負け、呪いのようにものすごいデッカイモザイクをかけられ、老女に励まされセックスをして死ぬ。彼は多様性の尊重にこだわっていたようだが、「あの土地に足を踏み入れ帰って来られる」と思った時点で、支配の欲望へ片足を突っ込んでいる。絶対にわかりあえないことをわかりあうのが、多様性の尊重なのではないだろうか。そんなメッセージ・テーマ性。

 

あと黒人の死に方も「博士後期過程のめちゃめちゃ世知辛い事情」という感じでかわいそうなんだよな。むしろこっちのテーマとしては「きちんと研究対象との関係構築をしましょう」みたいな教訓映画っぽくもあるし、ぜひ人類学の博士後期過程の人たちに感想をききたいシーンではある。

 

「浮気」の話に戻すと、主人公の女が自分の浮気については割りと棚において、浮気した恋人の死に「うひひ」と笑っているのは、皮肉みたいなものなのだろうか。ヤンデレ女の皆さん、自分の性欲を棚において恋人の浮気を責めてませんか?みたいなメッセージ(?)。
どうでもいいけど、主人公が女王に選ばれ持ち上げられるシーン、『魔法陣グルグル』の序盤で、闇魔法結社に着いたあと担ぎ上げられるククリと重ね合わせてしまった。そういえばダンスも共通のテーマだし、主人公の都合通りにことが進むのもアラハビカ編(浮気がテーマのひとつ)の流れだし、ミッドサマー=グルグル説……あるな(ない)。

 

今回の映画でひとり勝ちしてるのは、主人公たちをスウェーデンに呼んだ男だろう。彼はおそらくこれから学位を手にいれ、女も手にいれ、団体のなかでの地位も手にいれるに違いない。私が妄想する胸熱展開だと、実は彼が両親を儀式で殺されたことに恨みを抱いており、団体の崩壊を画策している、とかだったら面白いと思う。ミッドサマー2だな~これは~。(どうでもいいけど、ミッドサマー2って題名めちゃめちゃダサいな。B級映画としては100点だけど。)

 

表現の華々しさは実際に映画の画面をいくつか貼ればわかるとは思う。往年の名画の美しさではなくて、「園子音の暴力シーンってやけに美しいときない?」みたいなB級映画っぽい美しさなので、注意。作り物感満載の屍体と花々の調和。ラリったときの視界の表現。めちゃめちゃ燃える建物。

 

・まとめ
適当に思うことをメモしたかったので、だいぶまとまりのない文章になってしまった。別に2回みることもないと思うけど、何か必要になったらみようかな~、という感じ。わりと楽しく、好きなタイプの映画でした。以上。約2200字。